肺炎球菌ワクチンの接種率をあげる

はじめてのブログは肺炎球菌ワクチンについてです。

通院もしくは訪問診療を行っている高齢の患者さんの23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(肺炎球菌ワクチン)の接種率をあげるのにはどうしたらよいか?ということをSNSでつぶやいたところ北海道の家庭医からこんな論文あると紹介をしてもらったので読んでみました。

Interventions to Improve Influenza and Pneumococcal Vaccination Rates Among Community-Dwelling Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis

Darren Lau, Jia Hu, Sumit R. Majumdar, Dale A. Storie, Sandra E. Rees and Jeffrey A. JohnsonThe Annals of Family Medicine November 2012, 10 (6) 538-546; DOI: https://doi.org/10.1370/afm.1405


結論としては(1)ワクチン投与を医師から慢性および予防ケアの明確な責任を持つプライマリケアチームのメンバーにシフトすること、および(2)個人的な働きかけを通じて患者を活性化することが、地域に住む成人のワクチン接種率を改善する最良の機会になり得ることを示唆しているという論文です。

私もこの論文を読むまでは、この人には肺炎球菌ワクチンを接種してもらおうと思いながら医師である自分だけで目の前の患者さんにお勧めしていたのですが、調べてみると、期待していたほどには接種率が上がっていないことが分かりました。

医師は診察時にはマルチタスクで予防まで手が回りにくいと言うのもあるのですが、医療機関として質改善を行うにはシステマティックで効果的でなければなりません。

論文を読んで、看護師、事務職員の力を借りなければいけない!と、取り組みをはじめましたが、効果に結びついている気がします。


さて肺炎球菌ワクチンの歴史的経緯や基礎知識は国立感染症研究所のファクトシートが参考になります。

23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(肺炎球菌ワクチン)ファクトシート 平成 30(2018)年 5 月 14 日 国立感染症研究所

肺炎球菌ワクチンの接種目的は肺炎球菌による感染症の予防です。2歳以上の脾摘患者や脾機能不全患者、基礎疾患のある方や高齢者などの肺炎球菌感染症の予防で使われます。

ファクトシートによると、2016 年 6 月〜8 月に全国自治体 1741 を対象とした調査では、65 歳以上の成人に対する PPSV23 の平均接種率は 40.8%であったとされています。みなさまの施設ではどれくらいでしょうか?

肝心の論文に行きますと、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種率を上げるための介入のシステマティックとメタアナリシスで、様々な介入をオッズ比で表し、最終的に numbers needed to treat (NNT)として要約されています。

今回私が自施設でやりたいことは肺炎球菌ワクチンに関することですので、下半分を参考にすると(それぞれの文献をよまないと具体的な活動は分かりませんが)

  • 診察前にパンフレットを患者に手渡し(NNT=3)
  • 医師のリマインダー(NNT=6)
  • チーム変革(NNT=7)
  • 待合や診察室にポスターを貼る(NNT=7)
  • 医師の教育(NNT=9)
  • 印刷物を患者に郵送(NNT=9)
  • ケースマネジメント(NNT=11)
  • 地域メディアで患者にアナウンス(NNT=13)
  • 患者に予防のチェックリストを利用する(NNT=17)

が介入として参考になりそうですが、待合にポスターを貼っているだけではNNT=7の効果は全く感じられません。個別的な働きになっていないということでしょうね。

診察前にパンフレットを患者に手渡しがNNT=3とはとても効果的なお勧めに感じましたので、これを採用することにしました。

2020年5月から当院ではこのプロジェクトを始めています。数ヶ月の後に効果を検証したいと思います。

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